「我敵艦に突入す」という言葉は、第二次世界大戦末期の特攻隊と深く結びついたフレーズとして知られています。
当時の搭乗員たちが敵艦に体当たりする直前、無線で打電したとされるこの言葉は、モールス信号によって本部へ伝えられました。
この記事では、モールス信号という観点から「我敵艦に突入す」を整理し、その意味を探ってみます。
当時の通信手段としてのモールス信号
第二次世界大戦期、日本軍は無線通信の基本としてモールス信号を利用していました。
- 海軍・陸軍ともにモールスを標準採用
- 短波・中波の無線電信で遠距離通信が可能
- 電話や音声通信は混信しやすく秘匿性も低いため、重要な連絡にはモールスを多用
特攻隊の出撃時も、突入の瞬間を記録・報告する手段としてモールス信号が使われていました。
「我敵艦に突入す」という言葉のモールス信号
特攻時のモールス信号には伝承で作られたものや史実もありますが、よく語られる実際のモールス信号として「我敵艦に突入す」を紹介します。
特攻時のモールス信号「我敵艦に突入す」
「我敵艦に突入す」は、特攻機が敵艦に体当たりする直前に送ったモールス信号とされています。
ただし実際に「我敵艦に突入す」と送信するのは時間がかかります。そのため暗号化して利用されていました。
また、相手に合わせて「我、戦艦に突入す」「我、駆逐艦に突入す」「我、空母に突入す」などのバリエーションがあります。
「我、戦艦に突入す」は「セタセタセタ・・・」とセタを繰り返します。
モールス信号(セタセタセタ) | 音声 |
---|---|
・---・ -・ ・---・ -・ ・---・ -・ |
「我、駆逐艦に突入す」は「クタクタクタ・・・」とクタを繰り返します。
モールス信号(クタクタクタ) | 音声 |
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・・・- -・ ・・・- -・ ・・・- -・ |
「我、空母に突入す」は「ホタホタホタ・・・」とホタを繰り返します。
モールス信号(ホタホタホタ) | 音声 |
---|---|
-・・ -・ -・・ -・ -・・ -・ |
上記のモールス信号の後、いざ特攻するというときには電鍵を押しっぱなしにして「ツーーーーーーー」と鳴らします。
つまり「我、戦艦に突入す」の場合は、「セタセタセタセタツーーーーーーー」のような感じです。
最後の「ツーーーーーーー」の意味
特攻は必ず成功するわけではなく、特攻する前に撃墜されることもしばしばあります。
軍本部としては成功したかどうか知りたいのですが、当時は映像をリアルタイムで送信するのも困難です。
そこで「ツーーーーーーー」とモールス信号を鳴らし続けて伝えます。
例えば、零戦が時速500Km/hで1.5Km先の敵艦に突入すれば10 秒で到達することになります。
「ツー」と鳴らし始めて、10 秒より早く信号が途切れれば墜落、10 秒以上で途切れれば命中と推測できます。
成功したかどうか判断するため、こういった方法で最後に「ツーーーーーーー」と鳴らしていました。
歴史を振り返るのもモールス信号の楽しみ
現在、モールス信号はアマチュア無線や資格試験、さらには災害時の緊急通信に用いられる技術です。
しかし歴史を振り返れば、それは人の生死を記録する通信でもありました。
「我敵艦に突入す」という言葉は、モールス信号が果たした役割を象徴するフレーズであり、同時に戦争の悲惨さと通信史の交差点を示しています。
私たちがモールス信号を学ぶときに歴史的背景を知ると、単なる学習だけでなく過去に思いを馳せる意味も持ちます。